あ行 か行 さ行 た行 な行 は行 ま行 や・ら・わ行



〔やうていくわ(注)〕    
星宿s55p35    遠目には桜のごとき街路樹の羊蹄花さく恵州に来つ


〔やし(注)〕
星宿s56p52    峡ふかく来て山の木の椰子の葉に風の光るをわれはさびしむ
黄月s59p35    晩潮にひたる椰子の木時移り遠野に見ゆる澄邁ここは
黄月s59p36    蘇東坡が潮にかくるる椰子の木を詩によみし島われは見が欲し


〔やちだも(注)〕
立房s21p46    谷地栂の林あかるき若き葉は風に音する川ぞひにして


〔やつで〕
歩道s12p59    八手の葉ひとつひとつが揺れながら路傍に見えぬ冴えかへりつつ
歩道s12p75    宵々に冬靄こめてひとところ八手に咲ける花白くみゆ
歩道s14p105   日の光ひくく傾きさしながら八手の花に蜂まつはりぬ
しろたへs15p17  八手の花いづこにも咲きさながらに光ともしき冬は来りぬ
しろたへs16p39  八手の葉青木の葉など輝きて露ゆたかなる朝の道ゆくも
しろたへs18p74  そそぎたる雨は八手の葉のうへに今朝ふりおける雪をとかしつ
黄月s60p78    やつでの花冬日に開くころとなり思ひゐしよりうとましからず


〔やなぎ(注)〕
軽風s4p38     いづくにてか吾は見て来し一本の柳めぶきてをりしを思ふ
歩道s12p65    板囲したる空地はゆふぞらに柳の類のこずゑ見えをり
歩道s13p83    ひともとの青柳たちて曇日の裏の空地は風音もせず
立房s21p42    身にしみて緑にもゆる柳あり豊平川のたぎつ川洲は
立房s21p46    川原とも川の中洲ともおもほえて柳の緑けぶりたる見ゆ
立房s21p71    ここに来て平福百穂先生をしのぶよすがあり柳の黄葉
立房s21p71    山葡萄の実を負ふ人と湖のきし柳もみぢせる道に逢ひたり―再掲
立房s21p73    湖ぎしの道をあゆめばもみぢばの柳も葦もゆふぐれんとす
立房s21p78    音のなき釧路川岸に見るかぎり柳は黄葉いまだ残りて
立房s21p79    釧路川の一支流なる浅川に柳の黄葉ながれてやまず
帰潮s24p75    湖とくろき水田を境ひたる柳の下に狭しなぎさは
地表s29p69    水の上わたらふ風に吹かれつつ岸の柳は秋の実を持つ
地表s29p70    たたへたる水のむかうは石のなだれ一ところ柳黄ばむ明るさ
冬木s37p20    日のさせば朝の霜とくるわが庭に柳は赤き冬芽かがやく
形影s44p108   枝垂れて春のすがしき柳立つ六角堂に鳩あふれ棲む
開冬s45p12    水のべにをりて冬日の反映をしばらく受くる吾と柳と
開冬s45p14    わが踏みし柳の枯葉かたきこと寂びしともなく思ひいでをり
開冬s45p16    黄のいろの柳花さく沼の岸人も光もしたしかりしか
開冬s49p108   みづからの幹をめぐりて枝あそぶ柳一木はふく風のなか
天眼s51p44    夏すぎし九月美しく道に踏む青の柳の葉黄の柳の葉
天眼s52p63    アラスカのいづこも草に似る柳ゆく道のべに花さくもあり
天眼s53p92    雪山の映る湖のきしをゆくそのほとりにも柳花さく
星宿s54p8     身の老いしわれのごとくに柳立つ冬の日またく葉無きにあらず
星宿s54p15    やはらかき葉なれば音のなき柳夏あさく緑暗くなりたり


〔やまいも(注)〕
開冬s47p86    たまものの山芋も里芋もみなあまし根を食ふ冬となりにけらしも


〔やまごばう(注)〕
帰潮s24p96    赤らみてうら枯れわたる藜にも山牛蒡にも光さしをり―再掲


〔やまたちばな(注)〕
開冬s47p85    かすかなる山橘の実は照りてわが足軽し思なければ
天眼s50p7     庭にゐて山橘のささやけき実に空想のうごく冬の日


〔やまぶき〕
立房s21p26    山吹のつやつやとして緑なる枝うごかしし言ひがたき風
地表s28p31    山吹の緑の枝はぬれゐたり霙ふる庭ひとり見しとき
地表s29p52    山吹の枝の緑とかかはりのなきところにて黒犬が臥す
群丘s36p78    山吹も茨も照れりおほよそに冬枯れしかば山のひそけさ
形影s44p69    一日ひとひ花多くなる山吹の隣家にさけば見ゆる窓より
開冬s45p15    山吹を植ゑくれし人われは知る今年また咲きてその人はなし
天眼s53p85    ゆききする道にわが知る山吹のしげみ草藪に似てあたたかし
天眼s53p87    道のべの日々花多き山吹もつつじも旧知わが声を待つ
星宿s54p27    あたたかき冬至の日にて花に似る山吹のもみぢ風に吹かるる
星宿s55p32    山吹や連翹などの日にけぶり藪なつかしき蛇崩の道
星宿s55p34    ありのまま咲く道のべのやまぶきはいつ見ても黄の花うれひなし
星宿s55p46    蛇崩の道の斜陽にやまぶきの返花および老齢いこふ    
星宿s56p71    やまぶきの黄葉せし葉が花のごとわがゆく道に見ゆるこのごろ
星宿s57p80    春晴をたたへて憩ふことのあり山吹のさく路のほとりに
黄月s58p11    やまぶきの黄の花あふれ咲くほとり眼の悪きゆゑまぶしく憩ふ
黄月s58p21    日によりて数の異なる返花黄の山吹は寒暑なく咲く
黄月s58p26    山吹の黄に澄みとほる藪ありてその葉ことごとく散りしにあらず
黄月s59p39    かたはらの山吹の花さきそめてやうやく老いし眼を開かしむ
黄月s59p51    山吹の黄葉美しき道をゆく日々晴天をよろこぶわれは
黄月s60p64    晩春の雨ふるひと日家ごもり山吹の咲くくさむらも見ず
黄月s60p73    いまわれは老い衰へて家ごもる山吹の黄の葉ふむこともなく
黄月s61p85    山吹の花終りたる一叢のみどりをみれば黄の色はなし


〔やまぶだう〕
立房s21p71    山葡萄の実を負ふ人と湖のきし柳もみぢせる道に逢ひたり
立房s21p72    湖岸の山はおほよそ落葉して山葡萄おほしのこる紅葉は
立房s21p81    相隣る木にして友はコクワ採み吾はむらさきの山葡萄つみ―再掲
帰潮s24p92    山葡萄の広葉のもみぢ灼鉄のごとき色をも見つつゆくなり


〔やまぼふし〕
天眼s53p97    時長く咲く四照花梅雨ちかきころふく風に花びら強し
星宿s55p38    四照花二年花つけぬ些事ひとつをりをり思ひ梅雨あけとなる
星宿s57p86    今年さく四照花の花多くして半年平凡に病なく過ぐ
黄月s59p44    窓そとに四照花の白き花さきて思はしむる二人の姿いま無し


〔ゆ―かり(注)〕
天眼s52p75    ユ―カリのやはらかき葉を好むとぞパンダに似たるこのいきものは


〔ゆきやなぎ(注)〕
しろたへs18p78  雪柳のこまかき花はむしあつき日に輝きて心うとしも
星宿s57p80    その枝に花あふれ咲く雪柳日々来るわれは花をまぶしむ


〔ゆず〕
軽風t15s2p9   きはだちて黄色になりし柚子の実の梢にありて冬ふけにけり
立房s20p17    幼子のあそびし跡のすべすべとしたる畳に柚の種ふたつ


〔ゆづりは〕
しろたへs17p71  この市に裏白の羊歯ゆづり葉など売るべくなりぬ今朝来てみれば―再掲


〔ゆり(注)〕
歩道s12p66    くれなゐに角ぐむ百合に触りがたき心ただよふ一夜なりけり
冬木s39p43    餅のかび百合の根などのはつかなる黄色もたのし大寒の日々
開冬s47p73    わが庭の草たけて梅雨明けんとす咲くつまぐれも百合も草の香―再掲
星宿s57p87    わが庭の蕊によごれぬ純白の花さく百合を人に語らず


〔ゆりのき〕
形影s44p82    点々と黄の花ひかる百合の木とくろき立雲夕日を受くる
開冬s47p77    百合の木の黄葉して堅き葉の音の風にきこゆるところまで来し
開冬s49p118   百合の木のかげに憩ひて硬き葉の音降るときに人をしのびつ
開冬s49p121   風あれば鳩はたのしく飛ぶならめ花さく百合の木の上の空


〔よつづみ(注)〕
立房s20p12    朝々に霜のふるべくなりしかばよつづみの赤き実はうるるらん


〔よもぎ〕
立房s21p27    やはらかき蓬の萌えをうごかして風ひくく吹きいまだ寒しも
冬木s37p9     蓬など雪よりたてる岬山に白き氷の海をみさけつ
形影s44p65    枸杞の芽をつめば蓬の匂ひあり一日のかかる偶然もよし―再掲



〔らわん(注)〕
群丘s34p59    夏の日ににほふ貯木のラワン材水路の潮は風にながるる
形影s44p99    幹たかくチークもラワンもそそりたつ石に接して白きその幹−再掲


〔らん(注)〕
歩道s11p54    花すぎし虎杖の下に青々と雑草のごとく蘭しげりたる−再掲 ?


〔りゆうぜつらん〕
天眼s53p108   竿燈に似る花の穂のときながく咲く遊歩道やうやく寒し


〔りゆうのひげ(注)〕
しろたへs16p19  麦門冬のくさむらに槻の落葉ありて今日のあさけに覆ひたる霜


〔りら(注)〕
立房s21p43    ひかり持つ紫花の立房は梢にみゆるリラ咲きしかば


〔りんご(注)〕
しろたへs16p37  かたはらに折々きたる幼子は酸き一片の林檎を持てり
立房s21p43    林檎さくところを行けり紅に白まじはりて日に照らふ花
立房s21p43    その枝もその青き葉も花ともに林檎畑はかがよふ光
地表s28p40    夕光の畑にきたりて鈴なりの林檎の枝をくぐりて歩む
冬木s39p63    鈴なりになれる林檎を近景として雪山の遠きかがやき
冬木s39p69    ポ−川を過ぎていくばく来つるらんいちめんに赤き林檎の落実
天眼s51p49    葡萄くふ歌を考へをりたるに柿林檎蜜柑秋あわただし―再掲


〔るぴなす(注)〕
天眼s52p63    むらさきのルピナス群るる川原をよぎるときあり高原ゆけば


〔るりさう〕
黄月s58p20    簪のごとき瑠璃草を森ゆきてわれのみとめし秋の曇日


〔れたす(注)〕
形影s44p65    菜の花もレタスもひくくわたりくる光のなかに畑にかがやく―再掲


〔れもん〕
立房s21p28    明るさを保てるゆふべ暮れゆきて宵にレモンを食へば香ぐはし


〔れんげう(注)〕
天眼s53p85    ありのまま咲くものはよし道のべの三椏の花れんげうの花―再掲
天眼s53p85    帰り路の坂をあゆめば夕つ日は連翹の黄の花群にあり
星宿s55p32    山吹や連翹などの日にけぶり藪なつかしき蛇崩の道―再掲
星宿s57p80    われの眼のうとき今年は黄の花の連翹さくを知りて坂ゆく



〔わかめ〕
軽風t15s2p12   故里にわれ居りしころ味噌汁によく煮て食ひし春さきの若布
軽風s4p40     砂浜に砂にまぶりて乾してある若布のにほふ昼すぎにして
形影s43p44    春さきの若布をひでて食ふときに五十年前の香ぞよみがへる
形影s44p70    今日食ふは何処の若布かとおもふなど飲食たのし年老いてより
開冬s45p15    直接にわれの楽しき春となる山の蕨も海の和布も―再掲
開冬s46p59    老づきし身を養へと送り来し春の和布は潮の香ぞする
開冬s49p117   あづさゆみ春の若布を食ふときに千里山より筍とどく
天眼s52p67    木の実にて「かぼす」といふ酸味添へて食ふたとへば答志島の若布を―再掲


〔わさび〕
しろたへs16p27  山葵田をやしなふ水は一谷にさわがしきまで音ぞきこゆる
しろたへs16p28  音たてて流るるみづに茂りたる山葵の葉群やまず動きぬ
しろたへs16p28  わが位置の上につづきし棚田にてしげる山葵が水平に見ゆ
しろたへs16p28  植ゑつけしばかりの山葵二株づつ石に敷かれて水になびかふ
しろたへs16p28  山葵田のふる雨に人働きてわさびの香するところ過ぎゆく
しろたへs16p28  昼の雨あかるく降りて捨ててある路の山葵の茎を踏みつも
しろたへs16p28  雨ながら明るき昼にひとところ山葵の葉光り花かと思ふ
しろたへs16p29  白々と見ゆるわさびの長茎を背に負ひながら帰りゆく人
しろたへs16p29  山葵の葉押しあふばかり茂る田のその葉のなかに水の音する
しろたへs16p29  山葵田の水の落ちあふたえまなき音に馴れつつ二人もの言ふ
しろたへs16p29  榛の木のしたに影する山葵田はつめたき山の水がやしなふ
しろたへs16p29  山葵田のなかより立ちし榛の木はこの山の雨に若葉音する
しろたへs16p29  黒き蝶いくつともなく来てとべり山葵の上にまつはる如く
しろたへs16p30  わさび田の尽きたる谷の奥にして暫しやすらふ傘させるまま
しろたへs16p30  一谷のおほよそ暗くこもるごと昼雨ふりぬ山葵の青葉


〔わた(注)〕
しろたへs15p12  日比谷の蔬菜園にて綿の花淡黄にさきぬ今日来てみれば
しろたへs15p15  綿の花終らむとしてありしかどその後の日につひに行かずき

〔わらび〕
歩道s14p118   うらがなしき草の香ぞする逝く春の山に蕨を採りて持てれば
歩道s14p118   やはらかき若葉となりし蕨ありところどころに細くそよぎて
歩道s14p119   たづさひし妻かかはらぬ嘆きとぞ蕨をもちて谷を行きたり
歩道s14p119   風かよふ谷のなぞへは若草に蕨の類がまじりたりけり
帰潮s24p81    山寺に雨にこもればゆふぐれて蕨香ぐはしき飯をくひけり
帰潮s24p85    山焼きしあとに萌えたる蕨をもつみて田沢の湖とほざかる
冬木s39p49    潮いぶきかよふ岬の岳山に蕨はたけぬ春蝉のこゑ
形影s43p48    ひと朝の霜に萎えたる蕨らを戸隠原に踏みてあはれむ
開冬s45p15    直接にわれの楽しき春となる山の蕨も海の和布も


〔ゐぐさ(注)〕
帰潮s25p111    浜名湖の大崎といふ船着場なぎさに白く藺草を乾せり
群丘s32p28    しづかなる藺草のひまに浮草のこまかきものはみな紅葉せり


〔ゑんどう〕
冬木s38p34    おりてゐる鶴のやすけき声きこゆ冬豌豆の青き畑より
冬木s38p36    たちまちに冬の雨はれて豌豆をつちかふ畑は照る白き花
形影s44p64    海鳴のおほふ渚の砂畑ゑんどうの白き花さきそむる
形影s44p80    ゑんどうもそらまめも咲く渚畑潮にけぶりて白し春日は
開冬s45p11    砂畑に萱をめぐらし培へば冬のたけ低きゑんどうが咲く―再掲
開冬s46p43    豌豆も蚕豆も花はかなくてたえまなき海の響にゆるる
開冬s49p108   大根の花にまじりてゑんどうが咲きわが庭の春ゆかんとす―再掲
天眼s52p74    砂取の渚にあそびゑんどうの畑のほとりの水仙をつむ
星宿s54p10    波音のかよふ畑にゑんどうの十年相見し花いまも咲く




〔その他〕
群丘s32p33    なぎさには赤き海草おびただしうち寄せられて雨にぬれゐる
開冬s45p16    水いづる青枯草のひまの青みな短くて沼のべに萌ゆ 手賀沼での作
開冬s45p25    傾斜してひろき牧草の原あれば午後の光に草はかがやく
星宿s54p14    うつくしき紅葉の落葉くだりゆく三春あたりの峡のながれよ 
黄月s60p63    箱根なる強羅公園にみとめたる菊科の花いはば無害先端技術