あ行 か行 さ行 た行 な行 は行 ま行 や・ら・わ行



〔なし〕    
しろたへs16p35  果樹園に人ゐてのこりの梨を採るところを行けり休日けふは
しろたへs16p36  梨の香とニスの香として小さなる茶棚のまへに幼子ゐたり
しろたへs18p86  妻子らとゆく片側は時すぎし梨畑にて下の青草
立房s21p32    雪のうへ歩みて来れば昼すぎの日に影おとす高き梨の木
立房s21p38    先生はいまだ病みふしいたまはん雪きえて梨の花さくころか
立房s21p43    年ふりし梨の高木に白花は六月二日あふるるばかり
帰潮s24p85    みちのくの田沢の村は家々に梨の高木の花みゆるころ
地表s26p15    福島の県の梨を秋雨のさむき夜も食ふ君がたまもの
群丘s34p62    梨の実の黄いろにたるる梨畑木下に居れば曇日あつし
群丘s34p62    ゆく夏のひとひの曇わづらはし梨畑の土やはらかにして
星宿s54p18    梨の実の二十世紀といふあはれわが余生さへそのうちにあり


〔なす〕
歩道s8p21     昼すぎの光さしけり茄子畑の黒く立ちたる茎と葉のうへ
歩道s10p38    盛りあげし茄子あざやけき店ありて暫くわれは夕街にたつ
しろたへs17p64  港にて泊てゐる船の人らしく茄子と牛蒡をいだきて帰る


〔なたね(注)〕
形影s42p22    実りたる菜種畑のおきふしを荒野かとおもふ幾たびにても


〔なつすみれ(注)〕
黄月s59p50    夏すみれトレニアの花秋の日の庭のゆききに衰へずさく


〔なつみかん〕
群丘s34p50    幹堅き蜜柑畑の葉の下を清しくなりてたづさはりゆく
群丘s34p50    夏蜜柑の黄の実いまだもゆたけきに早きつぼみは開かんとする
開冬s48p99    新年のみつる光は三寸の黄橙の上にまのあたり見ゆ
天眼s53p82    蛇崩をくだり来て逢ふ黄柑は寒の日春近きゆゑ光あり
天眼s53p108   夏柑に黄の顕ち年のあらたまる蛇崩を行くただ歩くため


〔なでしこ(注)〕
立房s20p6     なでしこの透きとほりたる紅が日の照る庭にみえて悲しも
立房s20p10    撫子のをはりし庭に虫がねのさやけきこゑは夜々にきこゆる
形影s44p84    みちのくの仏が浦にわが憐れむ紅のつゆけきなでしこの花


〔ななかまど〕
立房s21p68    ナナカマド朱実の房のうつくしき日ごろとなりぬ落葉したれば
立房s21p81    ナナカマドのあふるるばかり赤き実よ木々落葉せし山中にして
地表s29p78    ななかまどの朱の房実の輝くを冬園にして仰ぎつつ見る
冬木s39p67    ななかまどの朱実たりたる並木みちモンブランより光およばん
黄月s58p11    晴曇にかかはりもなくななかまどの花梅雨ちかき道に輝く


〔なのはな(注)〕
立房s21p36    菜の花はひたすらに黄にかがやきて帰りくる青山南町のみち
帰潮s24p84    しづかなる莢実になりし菜のはたけ観世音寺のとなりの畑は ?
群丘s34p50    焼山の高きなだりをおほひたる菜の花おぼろ春ふけにして
形影s44p65    菜の花もレタスもひくくわたりくる光のなかに畑にかがやく
形影s44p72    たまねぎの向うすぎがたの菜の花は春惜しましむ泪出づるまで―再掲
形影s44p80    みちすがら採りて漬くれば菜の花の辛きもありていくたびも食ふ
開冬s45p11    菜の花の咲く冬晴の渚みちあゆむ幼は今年足つよし
開冬s46p43    あはれみて吾の伴ふ幼子は渚の路に菜の花をつむ
開冬s46p44    茫々と菜の花すぎん渚路いづこに見ても黄は映りよし
星宿s57p102   ゼラニュームの紅葉菜の花五六株今日ゆくりなく道に見しもの―再掲


〔なら(注)〕
軽風t15s2p8   白々と幹立古りし楢木立落葉あかるく雨ふりにけり
地表s29p62    晩夏の木もれ日うごき明るきに楢の林は幹あらあらし
地表s29p63    ゆく夏の強き光に楢林そとの桑畑はかぎろひの立つ
地表s29p63    さまざまに昼の蝉啼き逝く夏の楢の林のなかの明るさ
群丘s36p95    太木々の楢のもみぢの終るころこちたき心なくて山行く
星宿s54p13    虫いでず寒暑なき一日楢の葉のこもれ日うごく浅山にゐき


〔にら〕
立房s21p60    土のうへ低くすがしき一列の韮の白花を見おろして立つ
群丘s34p58    昼食のときに満ちゐし韮の香もながくたもたず梅雨のひすがら
群丘s35p66    やはらかき卵とぢの韮食ふときに一日ふきたる風なぎゐたり


〔にれ(注)〕
立房s21p42    暁のまだおぼろにて奥ふかき風の音する楡の高木は
地表s27p20    札幌のしづかに長き朝のいとま思ひ出づれば楡の上の雲


〔にんじん〕
立房s21p24    雪どけの音しきりなる厨には洗ひてまなき人参を置く
立房s21p39    ゆゑよしもなく驚きて人参の五寸余のびし赤き根を見る
帰潮s22p22    明けくれの貧しき吾と思ふなり人蔘の花ここにも咲きて
冬木s38p23    霜どけの畑に人ゐてうちつけに土より赤き人参をぬく
開冬s48p99    人参の葉など小葉は安らかに庭の上ひくく冬の日わたる


〔ねぎ〕
立房s21p23    貯への葱うつし植うるわづかなる裏の空地のゆふべ霜どけ
開冬s46p64    沙ふかき渚の冬の畑にて甘くなりたりこの葱の根は


〔ねむ(注)〕
歩道s10p41    金瓶の川わたるとき花さける合歓の一木のこころがなしも
歩道s13p86    現よりかなしき影のごとくにし合歓の花さく日に照らされて
地表s26p13    ゆふぐれし風のはかなさや合歓の木にひぐらしひとつ声ひきて啼く
地表s29p62    傾きてまだ暑き日に照らさるる海ぎしの青田ひとつ合歓の木−再掲


〔のうぜんかづら〕
星宿s56p64    ある路地に凌霄花あまた咲くその露けきをわれは知りをり


〔のびる〕
歩道s14p103   みちのべに野蒜の青きむらがりはやはらかにして土に靡けり


〔のぼたん(注)〕
黄月s58p16    のぼたんの濃きむらさきの花さくを日にひとたびは寄りて讃ふる


〔のり(注)〕
群丘s31p17    ひき潮につづく海苔?の黄にひかる海のしづかさひろびろとして
群丘s35p71    幾重にも海苔?ひかる海みえて岬のみちは要塞のあと
冬木s38p24    ゆふあかり浅山のまの入江にはしづく海苔棚の青いさぎよし