杉山太郎氏所蔵



テキスト ボックス: 桃の木はいのりの如く葉を垂れて輝く庭に見ゆる折ふし(昭和三十九年 色紙。歌集『帰潮』では「見ゆる」は「みゆる」) テキスト ボックス: 一夜ねてわれのめざめし朝あけに焼岳が日に照らされてゐる(昭和三十五年冬 色紙。歌集『地表』では「われ」は「吾」、「あけ」は「明け」) テキスト ボックス: 現なる心のながれをしみつつかすかに生きてありと思はん(昭和三十八年歳晩 色紙。歌集『群丘』では「心」は「こころ」、「をしみ」は「惜しみ」)



テキスト ボックス: 湖に見ゆる陸地は重々し岸の大木のみな影をもつ(歌集『群丘』では「見ゆる」は「見れば」)
テキスト ボックス: さわがしき海の光とおもふとき渚の光あはれしづけし(昭和三十六年一月二十二日 色紙。歌集『群丘』)

テキスト ボックス: きれぎれに吾の心によみがへる現身の悔消えがたくして(歌集『形影』では「現身」は「うつしみ」)



テキスト ボックス: ひと朝の霜に萎えたる蕨らを戸隠原に踏みてあはれむ(歌集『形影』)

たえまなき響のこもる戸隠の山に対ひて長く憩ひつ(歌集『形影』では「対ひて」は「むかひて」)

戸隠の頂に午後のかげ顕ちて麓の若葉いたく輝く
(歌集『形影』では「頂」は「いただき」、「かげ」は「陰」、「輝く」は「かがやく」)

昭和四十三年五月二十四日 色紙)



テキスト ボックス: 黐の木のほとりに憩ふ葉のひまが星空のごと青きひるすぎ(昭和五十八年八月 色紙。歌集『星宿』では「黐」は「もち」) テキスト ボックス: かりそめに手形をとれば年老て手に力なし瑞祥もなし(和紙。歌集『黄月』では、「瑞祥も」は「瑞祥は」。「老て」は「老いて」)





テキスト ボックス: まぼろしに似て浄きこと時にいふ幼きものの常とおもへど
(歌集『帰潮』では「浄き」は「きよき」、「いふ」は「言ふ」、
「もの」は「者」)
テキスト ボックス:  椎の葉に一聯のながき風ふきてきこゆる時に心は憩ふ
 (歌集『帰潮』では「一聯のながき」は「ながき一聯の」、
 「心」は「こころ」)
テキスト ボックス:  褐色の河の流のそそぐ海あはき濁をしづかにたもつ
 (歌集『地表』では「しづか」は「静か」)




テキスト ボックス:  札幌のしづかに長き朝のいとまおもひいづれば楡の上の雲
 (歌集『地表』では「おもひいづれば」は「思ひ出づれば」)
テキスト ボックス:  砂丘はいづくともなく明るきに曇の中に雲雀
 しき啼く(歌集『地表』では「中に」は「なかに」)
テキスト ボックス:  白藤の花に群る蜂の音あゆみさかりてその音はなし
 (歌集『群丘』では「群る」は「むらがる」)



テキスト ボックス:  黒き鯉赤き鯉むれて寄るみれば身を欹てて人に親しむ
 (歌集『形影』では「欹てて」は「そばだてて」)
テキスト ボックス:  白鷺は光りつつとぶ湖の空廣らなるところどころに