テキスト ボックス: 佐藤佐太郎歌碑

◆佐藤佐太郎の歌碑は、昭和四十五年に建立された青森県三厩竜飛岬を最初とし、これまでに自作の短歌作品について歌碑二十四基、そのほかに梵鐘、銘板(三首記載)があり、総数二十八首の短歌作品が各地に刻まれてゐます。その多くは、佐藤佐太郎の門人が中心となつて設置に尽力し、作品とゆかりの深い地に据えられてゐます。佐太郎は生前、建立に尽力した人達との縁を何よりも大切にしながら、俗気の無い地に歌碑が建立されるのを望んだのでした。なほ、そのほかに佐太郎の揮毫による万葉集の作品が三基あります。
◆歌碑説明板には、短歌・登載歌集名・作歌年・歌碑等の設置場所・建立年等を記載してゐます(作品の表記は佐太郎全集・選集に準拠)。写真の多くは、歩道同人であつた故瀧川愛親氏の撮影によるものです。ほかに竜飛の歌碑の拡大写真、観音正寺・赤壁・竜泉洞・下関・御舟手・神島などの歌碑・梵鐘の写真は歩道会員の撮影です。

【建碑順(左→右、上→下)。説明板をクリックすると、写真を拡大して見ることが出来ます】


竜飛崎(青森県) 当麻寺(奈良県) 大樹寺(愛知県)
テキスト ボックス: 陸果つる海の光に草山は黄すげの花のかがやくあはれ(群丘 昭和三十六年作 青森県三厩竜飛崎 昭和四十五年建立)

テキスト ボックス: 白藤の花にむらがる蜂の音あゆみさかりてその音はなし(群丘 昭和三十四年作 奈良県北葛城郡當麻町当麻寺 昭和四十九年建立)



テキスト ボックス: 大樹寺の八代の墓そがひなる春篁のひかりしづけし(冬木 昭和四十年作 愛知県岡崎市大樹寺 昭和四十九年建立)




観音正寺(滋賀県) 海上町(千葉県) 匹見峡(島根県)
テキスト ボックス: やや遠き光となりて見ゆる湖六十年のこころを照らせ(形影 昭和四十四年作 滋賀県蒲生郡安土町石寺近江観音正寺 昭和四十九年建立)
テキスト ボックス: ふる雨に明るくつづく桑畑ここの台地は古代にか似ん(天眼 昭和五十年作 千葉県海上郡海上町岩井  県立海上キャンプ場内〔滝不動尊南側台地〕 昭和五十二年建立)
テキスト ボックス: 紅葉の山のしづくに潤ひて岩はゆくてにしばしば光る(開冬 昭和四十七年作 島根県美濃郡匹見町 裏匹見 昭和五十二年建立)




神島(三重県) 青岸渡寺(和歌山県) 村松山(茨城県)
テキスト ボックス: 神島の女坂より雲と濤かすけき伊良子水道は見ゆ(天眼 昭和五十年作 三重県鳥羽市神島八代神社 昭和五十三年建立) テキスト ボックス: 冬山の青岸渡寺の庭にいでて風にかたむく那智の滝みゆ(形影 昭和四十三年作 和歌山県東牟婁郡那智勝浦町青岸渡寺 昭和五十五年建立) テキスト ボックス: ここに立ちここに詣でし少年は老鈍となる加護かうむりて(形影 昭和四十三年作 茨城県東海村 村松虚空蔵尊梵鐘 昭和五十五年落慶)




大河原町(宮城県)  赤壁(中国) 出水(鹿児島県)
テキスト ボックス: 生れしより六十年か低山のうへに蔵王の残雪ひかる(開冬 昭和四十八年作 宮城県大河原町甲子公園 昭和五十七年建立) テキスト ボックス: 国交が成りて思ひ出づる言葉あり「蒼海何ぞ曽て地脈を断たん」(開冬 昭和四十七年作 中国湖北省黄岡県(黄州)東坡赤壁 昭和六十年建立) テキスト ボックス: 空わたり来る鶴のむれまのあたり声さわがしく近づきにけり(冬木 昭和三十八年作 鹿児島県出水郡高尾野町下水流(荒崎) 昭和六十年建立)




鳴子(宮城県) 湯抱(島根県) 波崎〈茨城県〉
テキスト ボックス: 高原をめぐる紅葉の朱き山夜の雨はれて朝雲かるし(形影 昭和四十四年作 宮城県鳴子町鳴子温泉鬼首高原 平成三年建立) テキスト ボックス: むらさきの藤の花ちる峡のみち女良谷川にそひてわが行く(地表 昭和三十年作 島根県邑智郡邑智町湯抱 平成四年建立)

テキスト ボックス: あたたかに晴れし波崎の渚には潮干の波にあそぶ蟹あり(天眼 昭和五十年作 茨城県波崎町波崎海岸 砂丘植物公園 平成四年建立)




呼子(佐賀県) 御舟手(山口県) 長島(鹿児島県)
テキスト ボックス: 島近き海しづかにて雨あとの朝の道きよし呼子の町は(星宿 昭和五十五年作 佐賀県東松浦郡呼子町)
テキスト ボックス: ひとかたに流るる渦の見ゆるまで中空の月海峡に照る(群丘 昭和三十一年作 下関市長府御舟手海岸 平成六年建立)

テキスト ボックス: 長島のつづきのごとく寄りあひて天草みゆるところまで来つ(冬木 昭和三十八年作 鹿児島県出水郡長島町)




砂取(千葉県) 蛇崩(東京都目黒区) 龍泉洞(岩手県)
テキスト ボックス: あたたかき冬至の一日くるるころ浜辺にいでて入日を送る(形影 昭和四十一年作 千葉県安房郡白浜町砂取海岸 平成九年建立) テキスト ボックス: ・蛇崩の道の桜はさきそめてけふ往路より帰路花多し
・われのゆく蛇崩道に桜さくころ杖をもつ四年のあゆみ
・桜ちる昨日も今日もともなはんつれなき一人蛇崩をゆく
(天眼 昭和五十三年作 東京都目黒区上目黒蛇崩川緑道 川端橋のたもと 平成十年銘板設置)

テキスト ボックス: 地底湖にしたたる滴かすかにて一瞬の音一劫の音(開冬 昭和四十五年作 岩手県下閉伊郡岩泉町龍泉洞公園 平成十一年建立)




下関市(山口県) 佐渡鷲崎(新潟県) 村松晴嵐(茨城県)
テキスト ボックス: いのちある物のあはれは限りなし光のごとき色をもつ魚(群丘 昭和三十一年作  山口県下関市下関新水族館 平成十三年建立)

テキスト ボックス: ・金山の松の木に鳴く蝉のこゑ坑を出で来てまれに聞こゆる(星宿(佐太郎)昭和五十五年作)
・海のうへ照らす秋日にこの島のいづこ行きても稲田明るし(花影(志満) 歌集では二句が「照る秋の日に」)
新潟県両津市鷲崎(佐渡島)鶯山荘 平成十三年建立)
テキスト ボックス: 晴れし日の砂山のうへ濡石はみづからぬれて膏のごとし(形影 昭和四十三年作 茨城県那珂郡東海村村松 平成十九年七月十九日除幕)




朝日村(長野県) 市原市(千葉県)
テキスト ボックス: 白梅にまじる紅梅遠くにてさだかならざる色の楽しさ(天眼 昭和五十二年作 長野県朝日村古見 鎖川沿ひの親水公園 平成十九年十月三十一日除幕)
テキスト ボックス: 夕光のなかにまぶしく花みちてしだれ桜は輝を垂る(形影 昭和四十三年作 千葉県市原市ちはら台 宗武藝術文化ホール 平成二十三年十二月三日除幕)


 自作・自筆歌碑



  万 葉 歌 碑


         
 桜井(奈良県)    分間の浦(大分県)    黒之瀬戸〈鹿児島県〉
 テキスト ボックス: 三諸のその山なみに児らが手を巻向山は継のよろしも(万葉集巻七 柿本人麻呂作 奈良県桜井市 昭和四十七年除幕)

  テキスト ボックス: 海原の沖辺にともし漁る火は明してともせ大和島見む(万葉集巻十五 佐藤佐太郎揮毫 大分県中津市間々崎分間の浦 賀茂神社 昭和四十六年建立)

   テキスト ボックス: 隼人の薩摩の迫門を雲居なす遠くも吾は今日見つるかも(万葉集巻三 長田王作 鹿児島県出水郡長島町黒之瀬戸自然公園)