全国大会15-21年(2003-2009年)


                        


   平成二十一年度歩道全国大会

一 日 時 平成二十一年九月二十七日(日)〜二十八日(月)
二 場 所 神奈川県横浜市港北区 新横浜プリンスホテル
三 内 容 
  第一日 開会行事
      総合歌会T
      記念撮影
      班別歌会
      懇親会
  第二日 会員講話
       秋葉四郎 佐藤佐太郎生誕百年に思ふ
       菊澤研一 佐藤佐太郎について・・・時代・作歌の背景など
      総合歌会U
      入選者表彰
      歩道賞表彰
      閉会行事
四 事務局  歩道短歌会内 渡辺洋子
五 出詠者数 百二十八名
六 出席者数 百二十八名
七 佐藤佐太郎生誕百年記念賞(菊澤研一選)

  青田吹く風さやかなる故郷のいづこも鹿除けの網をめぐらす 伊藤典子

八 互選(四・五位は同得点)

  生と死の境に生きし兵の日を夢のごとくに思ふをりふし 石井伊三郎

  火のごとき晩年にして海南島東坡古蹟にまみえたまひき 秋葉四郎

  我が声も交れる会話のテ―プ掛け現に夫の在る如く聞く 下妻八重子

  馬鈴薯も玉葱も妻が培ひてそのつつましき夕餉わが食ふ 四元仰

  昂ぶりて言ひし言葉を悔やみつつ雨降り出づる坂を急ぎぬ 福谷美那子

  やうやくに言葉覚えし幼子の息づかひのみ受話器に聞こゆ 仲田希久代

  自らのことみづからがする慣ひ身につき二人の暮らしやすけし 鈴木眞澄




   平成二十年度歩道全国大会

一 日 時 平成二十年九月十四日(日)〜十五日(月)
二 場 所 千葉市中央区問屋町 ホテルグリ―ンタワ―千葉
三 内 容 
  第一日 開会行事
      総合歌会T
      記念撮影
      班別歌会
      夕食会
  第二日 講和
       戸田佳子(及辰園先生の花の歌から)
       香川哲三(歩道ホ―ムペ―ジ)
      総合歌会U
      入選者表彰
      歩道賞表彰
      閉会行事
四 事務局  歩道短歌会内 渡辺洋子
五 出詠者数 百四十八名
六 出席者数 百四十五名
七 佐藤志満主宰選(二首目以降は出詠順)

  春の潮湧くにかあらん海峡は日にきらめきて波しぶきたつ 早川政子

  いはれなき憎悪の兆すことありてわが晩年の単純ならず 亀谷増江

  受話器もつ失語症の夫わが孫にうなづくのみに応答しをり 杉村八栄子

  癌手術あすに迫りし老母に唱歌うたへば寝息の聞こゆ 佐々木加代子

  やうやくに植田の緑こくなりて梅雨の晴れまの風に香のたつ 佐藤淳子

  炎暑なる林にひととき風吹きてあまた黄蝶らとび出でめぐる 樫井礼子

  宍道湖に朝の靄のたちこめて蜆とる舟遠近のなし 柘植佐知子


八 互選(四・五・六位は同得点)

  田の水のぬるむまで照る陽光を浴びつつ一人浮き苗なほす 小田川芳子

  いはれなき憎悪の兆すことありてわが晩年の単純ならず 亀谷増江

  幼子の小さき手にて拾ふ石ひとつ拾へばひとつこぼるる 仲田希久代

  人工の渚しづけく干満の差のなき波がひたすらに寄る 四元仰
 
  阿蘇谷の浅きなだりに降りたちて牛らは霧にぬれし草食む 青田伸夫

  享年の父の齢に在るわれのこころつつまし枇杷熟るるころ 森谷耿子

  いくつもの氷河の水を湛へゐる湖青し冬の日晴れて 本間百々代



 佐藤佐太郎没後二十年記念(平成十九年度歩道全国大会

一 日 時 平成十九年九月九日(日)〜十日(月)
二 場 所 東京都千代田区飯田橋 ホテルメトロポリタンエドモンド
三 内 容
  第一日 開会行事
      総合歌会T
      記念撮影
      班別会
      夕食会
  第二日 講和
       故佐太郎先生二十年祭にあたつて
       ・四元仰(佐藤佐太郎先生没後二十年に思ふもの)
       ・黒田淑子(佐太郎と宗教感)
       ・波克彦(最後の外遊より〜海南島)
      総合歌会U
      入選者表彰
      歩道賞表彰
      閉会行事
四 事務局  歩道短歌会内 渡辺洋子
五 出詠者数 百七十一名
六 出席者数 百七十七名
七 佐藤志満主宰選(二首目以降は出詠順)

  笠雲をはつかに洩れしひかりにて新雪映ゆる冨士のいただき 青田伸夫

  亡き夫が「われの命」と愛しみ来し孫すこやかに高校生となる 甲斐隆子

  わがうちのいらだつこころさながらに掃除機の音ひとしきり立つ 可児昌子

  われの踏む蔵王のなだりの残雪につづきて白し凍る火口湖 本間百々代

  蚕豆の花にほふかたへ草を引く去年よりつづく悲しみありて 神田あき子

  生れし孫の柔らかき手の感触が帰りの電車に蘇へりたり 佐藤玲子

  みんなみの海の曇にこもる雷遠く聞きつつ菜花を間引く 鈴木千代


八 互選(高得点順…三位・四位は同得点) 

  白寿なる母を看取りて逝きたしと癌と向き合ふわが身励ます 別府美江

  のみこみし言葉のいくつ平安を保たんとするこころさびしき 田村茂子

  わがよはひ幾つならんと改めて思ふ事あり一日はながく 佐藤志満

  田草取り終へたる夕べ寛ぎて爪切りをれば泥の香の立つ 横川ます江

  田の原は境なきまで雪深し茂吉が母を焼きたるところ 森田暢子

  時化あとの朝かげおよぶ砂なぎさ踏み場なきまで荒布乾けり 在川道江

  佐太郎の生地の入野午ふけて広田も松の林も霞む 前田弥栄子


   平成十八年度歩道全国大会

一 日 時 平成十八年九月二十四日(日)〜二十五日(月)
二 場 所 神奈川県足柄下郡箱根町湯本 湯本富士屋ホテル
三 内 容
  第一日 開会行事
      総合歌会T
      記念撮影
      班別会
      懇親会
  第二日 講和
      父佐太郎のこと   (千速肇子)
                (渡辺洋子)
      箱根と茂吉・佐太郎 (青田伸夫)
      総合歌会U
      入賞者表彰
      歩道賞表彰
      閉会行事
四 事務局  歩道短歌会内 渡辺洋子
五 出詠者数 二百名
六 出席者数 二百六名
七 佐藤志満主宰選(二首目以降は出詠順)

  雨雲の晴れんとぞして残雪の峰は俄かに近づきて見ゆ 福田量子

  海橋を渡りてくれば梨畑が遠く見えをり花かがやきて 村上時子

  おもむろに霧のはれつつ杉の秀の明らかに山の朝明けてゆく 船河正則

  しみじみとここは寂しといふ夫おきて帰り来われもさびしく 近藤千恵

  干潮の河口に泥の集積があらはに乾く梅雨晴れし午后 田村茂子

  わが残生ありのままにて生きゆかん薄日さしくる林を歩む 市川勢子


  
乗り換へてなほゆく深き地下駅に平衡感覚薄れつつ立つ 野口知子

八 互選(高得点順…五・六・七位は同得点)

  しみじみとここは寂しといふ夫おきて帰り来われもさびしく 近藤千恵

  切岸にをりし千鳥ら一団の光となりて海になだるる 山口さよ

  阿蘇の雨激しく降りて放牧の牛もなだりをかけのぼりゆく 大津留偕子

  乗り換へてなほゆく深き地下駅に平衡戚覚薄れつつ立つ 野口知子

  新葦の角ぐむ根方に差す潮はさながら春の光をはこぶ 堀和美

  障害の娘を育てて四十年この明るさに支へられ来し 伊藤典子

  野焼あとの高原黒くしづまりて灰を被れる蕨の芽吹く 荒木精子



   平成十七年度歩道全国大会
      
一 日 時 平成十七年八月二十日(土)〜二十一日(日)
二 場 所 札幌市中央区北一条 ウェルシティ札幌 厚生年金会館
三 内 容
  第一日 開会行事
      総合歌会
      記念撮影
      班別会(佐藤佐太郎先生北海道詠草について)
      懇親会
  第二日 佐藤佐太郎先生作品再読
        佐保田芳訓(佐藤佐太郎先生の添削例)
        香川哲三(作歌の本質)
        山本和之(佐藤佐太郎短歌の魅力)
      総合歌会
      入選歌発表
      入賞者表彰
      閉会行事
四 実行委員長  高橋正幸(北海道)
五 事務局長   鎌田和子(北海道)
六 出席者数   百三十七名
七 出詠者数   百三十五名
八 佐藤志満主宰選(出詠順)

  衰へしわが目にまぶし夕光をつぶさにうけて柿若葉てる(山下和子)

  わが裏にもつかなしみの甦る桜の散りて葉の出づるころ(原田美枝)

  朝に夕に窓より眺めし手稲山いま高層の家の間に見ゆ(星野節子)

  ただざまに夏のひかりを反しつつモノレ―ルが行く街空のうへ(四元仰)

  飼はれゐるものら(いと)しも身を寄せて夜の鶏舎に声なく眠る(仲田紘基)

  無造作に網より抜かれし鰈いくつ箱の内にて身を翻す(原公子)

  夕茜うつる水田にわが影も植ゑ込むごとく苗の補植す(山口さよ)


九 互選(高得点順…二位・三位は同得点)

  夕茜うつる水田にわが影も植ゑ込むごとく苗の補植す(山口さよ)

  ハウスより田に運ばるる稲の苗朝の外気に湯気ひきてゆく(八重嶋みね)

  あるときはなきがごとくに身を処して子等との同居三年となる(鈴木真澄)

  おびただしきくさふぐ体打ち合ひて産卵したる水なまぐさし(坂本信子)

  敗戦を中に過ぎたる九十年写実のこころわれを支へき(吉田和氣子)

  もの食ひつつ()せて涙すその涙を機に悲しみの甦り来ぬ(鎌田和子)

  桜桃の花真つ盛り一山がはじけんほどにふくらみて見ゆ(高橋洋子)



   平成十六年度歩道全国大会
    
一 日 時 平成十六年九月二十六日(日)
             二十七日(月)
二 場 所 千葉県銚子市犬吠崎温泉 京成ホテル
三 内 容
  第一日 開会行事
      総合歌会(T)
      記念撮影
      班別歌会
      懇親会
  第二日 パネルディスカッション
        佐藤佐太郎先生「銚子詠草」について
         ◆司会進行……江畑耕作
         ◆パネリスト…飯塚和子、角田三苗、波克彦、岩沢時子
      総合歌会(U)
        班別歌会における問題作の提起と歌評
      閉会行事
      文学散歩(佐藤佐太郎先生の歌碑と「銚子詠草」作歌現場探訪 佐藤先生記念室めぐり)
四 実行委員長  江畑耕作(千葉県)
五 事務局長   小田朝雄(千葉県)
六 出席者数   百九十一名
七 出詠者数   百八十六名
八 佐藤志満主宰選(出詠順)
  わだかまることに非ずと道端の泰山木の花をみてたつ 門野澪子

  根付きたる早苗の育ち見んと来し植田は水の反照暑し 山崎正男

  大漁節の太鼓打ちをる園児らの気負ふ姿の涙ぐましも 猿田彦太郎

  ひとしきり夕映に水輝きし青田ほどなく暗くしづまる 塙千里

  五月雨の降る庭青く昏るるころ紫陽花の花のめぐり明るし 高橋美佳

  ここに聞く都市末端の海の音砂なき汀のこだまみじかし 四元仰

  泥中の足裏に根張り感じつつ色淡き田に追ひ肥を撒く 鷺山義明


九 互選(高得点順…四位・五位は同得点)

  ここに聞く都市末端の海の音砂なき汀のこだまみじかし 四元仰

  武蔵野は梅雨あかつきのしづけさにわがまのあたり落月赤し 吉田和氣子

  日もすがら野を焼きし炎しづまりて黒き大地に雨の降り出づ 荒木精子

  思はざる声出で病妻(びやうさい)を叱りしが叱りしのちのかかる寂しさ 渡辺謙

  葦を吹く風に炎暑の匂あり久しく雨を待つ梅雨の日に 近藤千恵

  またたく間なりしか妻病み妻逝きて段落のごと過ぎし一年 加来進

  泥中の足裏に根張り感じつつ色淡き田に追ひ肥を撒く 鷺山義明


   平成十五年度歩道全国大会

一 日 時  平成十五年五月十七日(土)
              十八日(日)
ニ 会 場  長崎市曙町稲佐山(いなさやま)観光ホテル
三 内 容  
  第一日 開会行事
      総合歌会(一)
      記念撮影
      班別歌会
      懇親会
  第二日 ビデオ(斉藤茂吉先生)を観る
      ビデオ(佐藤佐太郎先生)を観る
      総合歌会(ニ)
      閉会行事
      午後 文学散歩
四 実行委員長  黒岩二郎(長崎県)
五 事務局長   加来進(大分県)
六 出席者    二百二十七名
七 出詠者数   二百十八名
八 佐藤志満主宰選(出詠順)

  診察をうけつつ思ふ四十年わが身委ねし医師も老いたり 楠川和子

  冬の日に体あらはに輝きて豚らトラックに運ばれてゆく 佐藤淳子

  つり皮を握るわが手の深き皺冬の日差がまともに照らす 夏梅千代子

  冬日照る海の最中に一塊の光となりて鴎ら憩ふ 北嶋はるえ

  干拓の原夕暮れて明るきは高き葦群に黄の余光あり 黒岩二郎

  未熟児の孫を抱けば細き腕も五本の指も宝の如し 小島玉枝

  夜の道に支へゆきつつ徘徊の姑とのながき縁をおもふ 滝口恵美子


九 互選(高得点順 七位は同得点者三名)

寂しさの中にただよふごとき日々何時よりをわが余生とぞ言ふ 松生富喜子

付け放つ野火の炎に風生れて大観峰の谷にとどろく 大津留敬

夜の道に支へゆきつつ徘徊の姑とのながき縁をおもふ 滝口恵美子

荒崎の吹ぶく刈田にひしめきて鶴一万羽こぞり高鳴く 河南誠一郎

凍裂の痕をとどめて椴松の幹の明るさ雪野につづく 鎌田和子

父征きて母と夜水を盗みたる峡田まもなく国道となる 河野映子

いつよりか互みに所在たしかむる夫とわれの老いの暮しは 黒田フジ

長らふるゆゑのかなしみ深き母賜もののごと記憶失せゆく 荒木精子

憂なき日々願ふなどかなはざる思ひ持ちつつこの峡に老ゆ 矢上多鶴子